日本電産株式会社(NIDEC)は2019年6月20日に北京で中国初の記者会見を開催した。日電産(上海)国際貿易有限公司の林浜副総経理は、日本電産の「3in1」駆動用トラクションモータ「E-Axle」は2019年4月に量産を開始し、広汽新能源有限公司が発売した「AionS」と「Aion LX」シリーズに採用されたと発表した。
「Aion S」は10万台弱、「AionLX」は2~3万台の規模で搭載されると弊社が予測している。それ以外には2022年にPSAグループの採用、さらに広州汽車以外でも中国系トップ自動車メーカーからの内定も決まっている。検討だけでも、全世界に15社は下らないとみている。
NIDECは2019年3月期決算において、いままでにない強みを見せた。2018年グループ売上1兆4,754億円だった実績を2020年では2兆円の目標を掲げた。その中でも、車載単独は6,000億円の割合を占め、いまの車載事業から考えると倍近く成長させることになる。
しかし、7月24日の決算は前年同期比39%減少した。理由として中国市場での低迷を挙げこおり。家電や産業用モーターは不調だった。アトラクションモーターも先行投資の費用が重なり、中国市場での新エネルギー自動車の販売不振、円高など様々なネガティブ要素が挙げられた。会見会場には一度裏に身を引いた永守氏の姿があり、本音で語る場面もしばしばあった。
NIDECが中国市場で競うことは容易なことではない。2018年弊社が調査したモーター市場は、参入メーカーが150社を下らず、大半は市場シェアの1%未満となるが、市場シェアを大きく握るサプライヤーとしてBYD、北汽新能源、聯合電子(UAES)、精進電動、合肥巨一などがおり。これらのメーカーはNIDECが中国市場へ進出する際の競合になることに違いない。
モーターメーカーと完成車メーカーのアライアンスからみると、中国の自主ブランドの新エネ車メーカーは自主的に駆動モーターを開発し、また関連会社から製品を採用する傾向がある。コストダウン、かつ他社との差別化を図ることが目的である。例えば、聯合電子(上海汽車の傘下)、合肥巨一(JACの傘下)、華域汽車(上汽集団の傘下)は主にその親会社の新エネ車向け関連製品を提供している。モーターメーカーの上位5社のうち、精進電動の1社のみは自動車メーカーと資本関係がなく、同社の顧客は北汽新能源、Geely、広汽新能源などが挙げられる。
精進電動は2008年に、国家千人計画専門家の余平、蔡蔚らが設立した企業である。同社は上海市嘉定区と石家庄市正定県に年産20万ユニットと年産50万ユニットの駆動モーター生産工場および関連システムの開発拠点を建設した。BEV分野では、2018年12月に、ODプラットフォームに基づいた「モーター+インバーター+減速機」の3in1の駆動ユニット「JJE-EDM3000Fシリーズ」を市販した。現在では、複数企業との供給関係があり、2019年末に、同社の上海工場と荷沢工場で生産を開始する予定で、数年間で年間出荷量が20万ユニット以上に達成する見通しである。
PHEV分野では、同社は中国初の油圧冷却のデュアル駆動モーターを上市した。同製品は、モーターが直接変速機につながり高速歯車と嚙合わせる必要があるため、モーターの技術スペックが極めて高い。同製品の主要顧客は海外メーカーである。例えば、ChryslerのPHEV「Pacifica(中国車名「大捷龍」)」は同製品を搭載している。また、中国市場では、2018年に広汽新能源のPHEV「伝祺GS4」に採用された。
政府では、「中国製造2025重点領域技術路線図」を発表し、駆動モーターの2020、2025、2030年の目標として、乗用車の場合、20sの有効出力密度がそれぞれ3.5、4、5kW/kg以上、商用車の場合、30sの有効トルク密度がそれぞれ18、19、20N*m/kg以上にするとしている。駆動モーターの効率向上、高出力密度と集積化は将来のモーターの技術方向性になる。
ローカルメーカーは性能では外資系よりそれほど優れていないが、価格上において優位性があり、また、ローカル向けでは、顧客のニーズにより製品のカスタマイズサービスが実現しやすいなどの利点が挙げられる。外資系メーカーは中国進出には、性能面における効率、パワー密度、小型化、システム集積化など優れているが、コストダウンも重要な課題となる。
新エネ車補助金の撤退に伴い、優遇の比重がなくなり、ローカルメーカーと海外メーカーの競争が始まる。より性能の高い駆動モーター製品のニーズが益々上昇していく。それに対して、中国メーカーも積極的に自社開発力を高めている。
精進電動の新エネ車関連製品 |
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BEV |
PHEV |
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JJE-EDM3000Fシリーズ 3in1(モーター+インバーター+減速機) |
デュアル駆動モーター(油圧冷却) |