第17回広州国際モーターショーが2019年11月22日から12月1日にかけて「中国進出口商品交易会展館」で開催された。中国におけるトップ3のモーターショーとして今回のテーマは「ハイテクノロジー、ニューライフ」というコンセプトを掲げた。各自動車メーカーが出展し、1,050台の車種の内、初登場した車種は48車種となり、海外自動車メーカーからは6車種、中国ローカル自動車メーカーからは42車種が発表された。また、コンセプトカーとして海外自動車メーカーは15車種、中国ローカル自動車メーカーは13車種を出展した。
さらに、出展車種1,050台のうち、新エネ車は182車種であり、全体の17.3%を占めた。182車種の内、海外自動車メーカーは70車種に達し、Benz、LEXUS、Audiなどのハイエンドブランドも相次いで新車種を投入した。BenzはEV車種EQCの現地生産を発表後、今回のモーターショーでEQSのコンセプトカーを発表した。EQSは、Daimlerのミドルハイエンド向けの電動プラットフォームをベースに開発された。EQシリーズの中では「Sクラス」と認識されている。Audiの主力車種は電動自動車の「e-tron」と「Q2Le-tron」となる。同時に「s.t.e.p.」の電動化戦略も発表し、「System、Technology、Experience、Product」の4大領域を含む戦略として、今後の中国市場における電動化の位置づけを明らかにした。日系では、LEXUSは電動自動車の「ux300e」をグローバルで初発表した。電動化に注目する中、高級ブランド間の競争もますます激しくなるとみられる。
高級ブランドに対して、合弁ブランドはよりコストパフォーマンスの高い新エネ車を展示していた。VWの「ID.3」、トヨタの「C-HR」、ホンダと東風の現地共同開発モデルのの「VE-1」、長城汽車傘下の高級ブランド「WEY」、PHEVモデルの「VV7 PHEV」と「VV7 GT PHEV」、一汽トヨタ奕沢(IZOA)、北京Hyundaiの 「菲斯塔(LA FASTA)EV」なども展示された。合弁ブランドの新製品が次々と発売されることで、国内の新エネ車市場での競争が一層激しくなる見通しだ。
このほか、新勢力として、蔚来(NIO)、小鹏(Xiaopeng)、威馬(WM)、天際(NOVAT)、拝騰(BYTON)、赛力斯(SERES)などの車種も出展された。このうち、赛力斯と拝騰 は初出展であり、今回出展した新興自動車メーカーは、すでに量産化を行ったり直近で大規模融資を受けたメーカーが多い。威馬汽車傘下の威馬「EX6 Plus」が今回の広州モーターショーに登場した。これは、威馬の、AセグメントからBセグメントまでのSUVをカバーしているが、他方4億ドル(約28億元)のCラウンド融資を行った小鹏は、「小鹏P7」を展示、「小鹏P7」は自社のSEPAプラットフォームに基づき開発されており、NEDCでは航続距離を600kmを超え、ADAS、OTAなどの機能も搭載した。
中国汽車工業協会によると、2018年の自動車市場は全体的に低迷し、2019年においても再び10%の下落が予想される。自動車市場の低迷で、自動車産業は2020年以降には統廃合が進み、経営不振な自動車メーカーは今後、倒産する可能性も高い。力帆、衆泰汽車では資金難の噂も後を絶たない。このような市況の中、市場が最も低迷しているのはA~A00セグメントとなっている。
今回のモーターショーは、13の展示館を使用し22万平方メートルを占用しているが、出展者数については昨年と比較し減少傾向にある。経営不振の力帆、衆泰汽車など13社の自動車メーカーは未参加であり、新興自動車メーカーも昨年と比較して半減した。
こうした不況の中にあって、電動化とスマート化の加速化は今回のモーターショーの見どころとなった。
新エネ車に関しては、既に2009年に工信部は「新能源汽車生産企業与産品準入管理規則」を発表し、国家プロジェクトとして普及をスタートさせた経緯がある。10年間の補助金支給、政府政策にけん引され発展してきたが、ここに来てEVの問題が多く指摘され、EVへのシフト変化に踏み切れない自動車メーカーも出てきており、EV戦略が業界を揺らす中で、2019年12月2日、工信部は「新能源汽車産業発展規劃(2021-2035)」を発表した。その中で、2025年までに新エネ車の販売台数は総販売台数の25%を占め、条件付自動運転機能、コネクテッドカーの販売台数は30%を占めることが明らかになった。25%の販売目標にした場合、、2019年には130万台近く、2025年には700~800万台以上の市場規模まで成長するとみており、新エネ車を推進する強い姿勢を見せた。
これに備え、各自動車メーカーも新エネ車市場に対する戦略が注目された。広州モーターショーの前に、VWは広州塔の下で「新大衆との出会い」の発表会を開き、未来の電動化戦略を宣言した。その後、今回のモーターショーで、大衆は「ID.3」、「ID.」などの現地化製品を含み、「新四化」(新CASE)としての成果を一気に披露した。2025年までに中国で販売される車種のうち、25%から35%をEV車種にする戦略を明らかにした。
2020年に新エネ車の補助金政策が正式に廃止される。これは新エネ車市場は政府のけん引からより市場主導へ移行することを意味する。外資系自動車メーカー各社も相次いで新車種を投入しており、新エネ車業界の競争が激しくなる見通しである。長期的に見れば、新エネ車がガソリン車を凌駕して行くことは必然的な趨勢であるが、現在低迷している市場に耐える自動車メーカーこそ、真の勝者になりうると考えており、それを達成するには、企業間の提携や、さらなる開発スピードの加速が必要となる。