図1 HuaweiMate30シリーズのドイツ・ ミュンヘンでの発表会で、余承東がMate30 Proの「Horizonディスプレイ」を展示
発表会の直前、9月18日夜に消費者向け端末事業の最高経営責任者(CEO)を務める余承東氏は、個人ブログでMate30シリーズを自信に溢れて紹介した。ブログで「もしHuaweiのP30ProとMate30Proが同時に水に落ちたら、どっちを先に拾いますか?」と聞かれ、余氏は「拾う必要がなく、どちらもIP68防水機能に対応している」と笑いながら語った。余氏が自慢する技術力は防水機能だけでなく、「性能が強く、デザインが優れ、5Gの機能も優れ、時代を超える体験がもたらす」とHuawei Mate 30シリーズを大称賛し、「Huaweiファン」たちの好奇心を最大に刺激した。
実は数日前、業界から「Huawei Mate30シリーズ国産化」というリスト(図2)が流出した。リストではすべての部品が中国企業から供給され、それでHuaweiが米国の制裁の下で、国産化にシフトしていくという話が広まった。よく見ると、Huaweiとリスト中の企業との繋がりも見つけられる。Huawei傘下の哈勃科技投資はこれまでリスト中のSiCを手掛ける山東天岳公司に出資しており、SiCは5G通信の基礎材料として、「SiCを得る者は天下を得る」といわれる。
9月19日午後8時、Mate30シリーズの発表会がドイツ・ミュンヘンで開催され、Mate30シリーズが発表された。余承東氏は、今回のMate30シリーズの強大な機能「7680fpsスローモーション撮影」、「AI情報保護」、「AI自動回転」、「エアジェスチャー」、「無線逆充電」などを詳しく説明した。同発表会では、ライバルのSamsung Galaxy Note 10+やアップルiPhone11 Pro Maxと比較して、より大きな画面、より軽量、より長いバッテリー駆動時間、より鮮明な暗所撮影を備えるMate30シリーズが性能抜群であることが明らかになった。
2020年に到来する5Gの商用化に向けて、Huaweiはすでに準備が整っている。
今回発表したHuawei Mate30シリーズには世界初のKirin990 SoCチップを搭載し、「Balong5000」ベースバンドが使われ、21個のアンテナを搭載し、そのうち14個が5Gに使える。また、対応5Gバンドについては、Samsungの5G対応スマートフォンGalaxy Note 10+5GはただN79、N78、N413つのバンドに対応するのに対して、Mate30 5GシリーズがN79、N78、N77、N41、N38、N27、N3、N1と8バンドをサポートできる。それに、Mate30シリーズは、SAモードとNSAモードを同時に対応することもでき、現在「最強」の5Gスマートフォンといわれる。
ダウンロード速度についても、発表会でライバルと比較する動画が公開された。Mate30 Proの 5G通信速度は4Gの25倍で、Samsung Galaxy Note10+5Gより50%速いことが分かる。5G 状態の電池時間と冷却性能について、発表会で公開した比較データによると、Samsung Galaxy Note10+5Gの電池時間はわずか6時間、それに対して、Huawei Mate30 5Gは8.2時間、Mate30Pro 5Gは9.2時間に達した。1時間の5G ビデオ通話をした後、Samsung Galaxy Note10+5Gの前後の機体の温度と比べ、Huawei Mate30 pro 5Gが3℃程度低いことが分かる。
これまでHuaweiに携帯電話部品を提供してきたサプライヤー(表1)から見ると、米国サプライヤーはHuaweiの主要な海外パートナーであることが分かる。しかし、2019年前半、Huawei創業者の任正非氏はインタビューで、米企業の供給の比重を減らしていくことを表明した。さて、今回発売したMate30シリーズの主要サプライヤーはどのように変化したのだろうか?
表1 北京凱美莱信息諮詢有限公司のレポート
公開情報によると、今回のmate30のサプライヤーの一部(表2)を整理した。今回のサプライヤーを見ると、二つの特徴がある:一つ目は、各部品のサプライヤーが少なくとも2社であること。これは特定のサプライヤーに依存しない原則となる。発表会後のHuawei消費者業務携帯電話産品副総裁を務める李小龍氏への取材では、Mate30シリーズのディスプレイはSamsungだけから供給するのではなく、中国ローカル企業も採用した。李小龍氏の話によると、今後Huaweiは中国ローカル企業との連携を深めることを通じて、中国ローカル企業を育成することに取り込んでいく傾向が見られる。
国内の優秀なサプライヤーとの協力を深める一方で、Huaweiも積極的に自主開発への投資を進めている。李小龍氏の取材によると、HuaweiはMate30シリーズに約1億5000万ドルの研究開発費を投入しており、Mate30 Proの研究開発費もほぼ同じである。つまり、Mate30シリーズの総研究開発費が総計3億ドルで、関連の研究開発人員は約3,000人に上る。
海外サプライヤーの中で、日系企業との提携が深い。
米国がHuaweiをエンティティ リスト(Entity List)に加えてから、Huaweiのコア部品の代替案が注目され、その中にRF前端アナログチップは短期で代替されないと公認されていた。表1から見ると、以前HuaweiのRF前端は米国企業SkyworksとQorvoが共同で提供した。今回新発表のMate30シリーズの5G RF前端は日本の村田製作所から単独で供給することになり、村田製作所が米国企業に代わり、最大の勝者になったといわれる。
三菱ガス化学株式会社、日本ゼオン株式会社、太陽ホールディングス株式会社、日本高純度化学株式会社、AGC株式会社、恵和株式会社、三井金属鉱業株式会社などスマートフォン先進材料のメーカーもHuaweiの有力なパートナーとなる可能性が見られる(表4)。
表4 「日本経済新聞」2019年9月11版
販売状況に注目してみると、今回発表されたHuawei Mate30シリーズに多くの国産サプライヤーが集結されたので、その売れ行きに大きな期待が集まっている。では、Huaweiの携帯電話事業の実績はどうなるか?余承東氏は今回の発表会で、2019年6月までに、Huaweiのスマートフォン事業の売上高が26%の伸びを達成し、そのうちMate 20シリーズ(2018年10月発売)の販売台数は1,600万台、P30(2019年4月発売)は1,700万台を超えたと公開した。でも、英調査会社のIHS Marketが発表した2019年上半期の世界携帯電話出荷台数ランキングでは、1位はアップルのiPhone XR(出荷台数約2,680万)だった。市場は商品の試金石と言われ、Huawei Mate30シリーズの発売に伴い、「中華有為」のもっと輝く業績が期待されている。