第16回北京国際モーターショー((AUTO CHINA 2020))が2020年9月28日から10月5日にかけて「中国国際展覧中心」で開催された。新型コロナウイルスの影響により各国が延期または中止する中、北京国際モーターショーは先行して開催された。今回の北京国際モーターショーは合計で785車種が展示されており、そのうち、新エネ車は160車種を占める。新エネ車は、輸入車が13車種、ローカル自動車メーカーから147車種が発表された。初登場した車種は82車種である(海外からは14車種、中国ローカルからは68車種)。また、コンセプトカーとして36車種を出展した。
今回のテーマは「智領未来」(Smart Vehicle For The Future)であり、すなわち、5G、ビッグデータ、AI、IoTなどの技術を応用した未来向けの「智慧出行」(Intelligent Transportation)と呼ばれたコンセプトである。今回の北京国際モーターショーには国内外の自動車業界が最新の新エネ車を発表すると共に、最先端の技術と製品を集中的に展示し、コネクテッドカー、自動運転などの新技術と伝統的な自動車工業の結合による革新展示物に焦点を当てる。
中国は2015年から、5年連続で世界最大の新エネ車生産販売国となる。2019年全世界における新エネ車の販売台数は221万台であり、その中、中国の販売量は120万台となり、世界の過半数を占めている。2019年からダブルクレジット制度が実施され、いままで中国ローカルがけん引してきたマーケットには、海外ブランドの参入が目立ち、競争が激化する。
今回のモーターショーは新興メーカーとして注目を浴び、TESLA、蔚来(NIO)、小鹏(Xiaopeng)、Polestar、威馬(WM Motor)などが主力車種を展示した。TESLAは2019年5月から世界のEV販売台数トップに位置しており、特に「Model 3」の販売台数は自社販売実績の8割を占めている。2020年の1~8月「Model 3」の販売台数は22万台となる。今回TESLAからは「Model X」、「Model S」、「Model 3」が出展された。新興メーカー以外に、既存メーカーは自主開発した新エネ車種を発表した。東風集団(Dongfeng)は高級新エネ車ブランド「嵐図」、北汽新能源(BJEV)はARCFOX、吉利汽車(GEELY)はEVブランド「几何汽車」などを展示していた。現在、中国の自動車産業は徐々に回復しており、新エネ車市場も安定的に上昇し、将来的には、市場が更に統廃合し、競争力の強い企業が生き残るとみられている。
新エネ車が注目されると同時に、各自動車メーカーは車両の「智能化(スマート化)」に競争を展開している。TESLAは車両周囲および内部に合計で8台のカメラを搭載し、360°の監視を実現可能である。また、前方160mをカバーするミリ波レーダー、超音波センサーなどの自動運転装備を備える。新宝駿(New Baojun)E300はコネクテッドシステムを利用し、音声で自宅のエアコン、窓口、飲料水機などを遠隔による室内家電のコントロールを実現した。蔚来(NIO)はNIO OS 2.7.0のアップグレードの情報を公表し、NOP(Navigate on Pilot)運転補助システムを発表している。NOPシステムは車両が特定の条件下(特定のエリアなど)で、カーナビで事前に計画した走行路線に沿って、実レーン(匝道)の自動進入、追い越し、併走、巡航走行などの補助運転機能を実現可能にしている。
自動車メーカーだけでなく、ICT企業やTier1も2020北京国際モーターショーで革新技術やソリューションを展示している。Huawei、Horizon、Bosch、アイシン精機などがモーターショーに参加し、各自の製品や戦略などを発表している。
Huaweiは自主開発の智能運転システムを展示し、北汽集団、広汽集団と提携して、Huawei Hi-car技術を搭載する車種を2021年量産化する予定。Boschは「スマートカー、スマートシティ、Industry4.0、スマートホーム」に注力し、特にスマートカーに高性能LIDAR、カメラ、スマートソフトを提供する。
Horizonは車載AIチップのリーディングカンパニーとして、今回は「征程 3」を発表した。「征程 3」はAIコンピューティング能力が5 TOPSを達成し、消費電力は2.5W、高レベル自動運転、補助運転、高精度地図ナビゲーションをサポートする。
近年、通信技術の発達により、自動車メーカーやICT企業などは自動運転分野での競争が激しくなる。チップ搭載に関して、Teslaが独自開発したFSDチップは1チップ当たり72TOPSに達している。NVIDIAのチップは小鹏(Xiaopeng)に出荷しており、計算力は30TOPS、L2+の自動運転レベルを達成した。同社のOrinチップの計算力は200TOPSに達し、2022~2024年にかけて量産する計画を立てており、Mercedes-Benzは2024年に同チップを搭載する予定である。中国ローカルの蔚来(NIO)、理想(LIXIANG)などはIntelのEye Q4チップを採用し、L2+の自動運転を狙う。TeslaはLiDARを搭載せず、カメラの機能を重視し、ミリ波レーダー、超音波センサー、高速CPUで自動運転を実現している。中国ローカルの蔚来(NIO)、小鹏(Xiaopeng)などはミリ波レーダーを重視し、蔚来(NIO)ES6、小鹏(Xiaopeng)P7はミリ波レーダー5個を搭載し、カメラや超音波センサーで補助する。
車種 |
カメラ |
ミリ波レーダー |
LIDAR |
超音波センサー |
|
Tesla |
Model 3 |
8 |
1 |
0 |
12 |
理想(LEADING IDEAL) |
One |
5 |
1 |
0 |
12 |
蔚来(NIO) |
ES6 |
8 |
5 |
0 |
12 |
小鹏(Xiaopeng) |
P7 |
13 |
5 |
0 |
12 |
Waymo |
I-PACE |
29 |
6 |
5 |
12 |
Audi |
A8 |
5 |
5 |
1 |
12 |
中国は、世界最大規模の自動車マーケットであり、自動運転開発における影響力は大きく世界から注目される。また、ビッグデータに強みがあり、自動運転の開発に欠かせない要素である。政府政策、法的責任、開発支援、ユーザー好みなど様々な要素から、中国は最も自動運転が実現しやすい国とも言われ、中国の北京、湖南省長沙市、河北省滄州市などの一部の地域では、ロボタクシーの試験運転が順次に行われ、小規模商用が開始している。5Gのミリ波技術を生かし、LiDARの開発、AIの応用などがますます注目される。
今回の北京国際モーターショーは「智領未来」のコンセプトを中心に、「電気駆動+コネクテッド」という概念の下で新エネ車+コネクテッドカー、自動運転が注目されている。新たなビジネスモデル、ユーザー嗜好の多様性に対応した車種が展示された。